2011年3月11日金曜日

<黒川文雄のサブカル黙示録>アニメフェアで見たアジアの台頭

 アニメなどの映像総合見本市「東京国際アニメフェア(TAF)2010」が3月25?28日、開かれました。海外の映像系コンテンツマーケットでは仏カンヌで開かれる「MIPCOM」「MIPTV」が有名ですが、TAFは、アニメを中心にビジネス(商談)、とパブリック(一般観覧)に分かれており、声優を招いてのイベントや予告編上映などメニューも盛りだくさんという世界的に珍しいイベントで、海外でも知られています。

 今回は、会場で海外バイヤー(買い手)と日本セラー(売り手)の両方からの話を聞くことができましたので、ぜひその内幕について触れましょう。

 まず、数年前までは欧米系のバイヤーが主流でしたが、急速に中国を中心としたアジア系バイヤーが増えているそうです。確かに展示でも中国系コンテンツホルダーや制作会社が多くなっており、海外客(前年比6%増)の約7割が中国を代表格とするアジア系ではないでしょうか。日本側セラーとしては、バイヤーが増えたことで売りやすくなった半面、世界的な経済不況により、購入時の「前渡し金」に当たる「ミニマムギャランティー=最低保証金)」の設定が難くなったそうです。また、売れセンのコンテンツばかりが人気で、いまだに不況を脱した感覚はないようです。日本国内のコンテンツ需要が斜陽化する中で、海外に活路を見いだしたいところですが、そうもいかないのが現実なのでしょう。

 逆に言えば、海外のバイヤー側には、購入しやすい環境になったともいえます。セラー側も1コンテンツ当たりの単価は以前より下がっているものの、まとめ買いをするアジア系バイヤーには歓迎すべきかもしれません。しかし、バイヤー側も慎重になっていて、以前ならばプリバイ(完成する前にキャストや予告編などで判断して購入すること)をしていたようなコンテンツにも買い控えがあるようです。また日本で人気のコンテンツが海外でも売れる法則は当てはまらないことが多く、その“選球眼”も大切です。

 さて今回目立ったのは、中国系コンテンツと制作会社の発展ぶりです。ただコンテンツの出展も多かったのですが、まだ日本で受け入れられるのは難しいと思われます。西遊記や三国志などをモチーフにしたものが多く、キャラクターもどこかで見たような感じで、成熟にはしばらくの時間が必要です。

 しかし、ツールの高度化と普及もあり、制作のテクニックは十分保有しています。既に数年前から日本アニメの「下請け」として腕を磨いてきているからでしょう。もしかすると先端を走っていた日本が振り向いたら、すぐ後ろにはアジアのコンテンツがいた……なんてことにもなりかねません。日本が戦後から欧米を模倣して成長したように、今後のアジア系コンテンツの成長は自明の理です。さらにいえば、東京で開催されていた見本市が、今後は上海や北京になるという流れもありえます。モーターショーでも実証済みですが、需要のあるところで開催するのはビジネスとして当たり前のことです。

 今回のTAFで個人的に感じたのは、映画「アバター」の成功を受けてなのでしょうが映像の3D化、CG映画が進んでおり、その題材が「牙狼」「キャプテンハーロック」などリメークが多いのは、アジア重視志向の表れではないかと思っています。 

 ◇筆者プロフィル

くろかわ?ふみお=1960年、東京都生まれ。84年アポロン音楽工業(バンダイミュージック)入社。ギャガコミュニケーションズ、セガエンタープライゼス(現セガ)、デジキューブを経て、03年にデックスエンタテインメントを設立、社長に就任した。08年5月に退任。現在はブシロード副社長。音楽、映画、ゲーム業界などの表と裏を知りつくす。

引用元:フリフオンライン(Flyff) 専門情報サイト

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